2023年12月2日
当社はこれまでも東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野(研究総括 菅野 武医師※)と消化器分野の医療シミュレーターの様々な可能性をリサーチ・議論し共同で要素検討を行ってまいりました。
わたしたちは、要素検討から研究開発へと一歩前に進め、実際のものつくりフェーズに移行します。これから作っていこうと考えているものは、消化器内視鏡を使った低侵襲な手術のシミュレーターです。食道、胃、十二指腸(胆管含む)、大腸に出来た病気をお腹を切らずに出来る手術の様々なシミュレーターやトレーニングモデルの創出を目指します。また、交流を通じて医療シミュレーターの開発に携わる人材の育成にも努めていきたいと考えております。
・共同開発の背景
昨今、消化器内視鏡性能の大幅な向上と処置具類の充実化により、内視鏡は病気を発見するだけではなく、内視鏡を使った治療も盛んに行われてくるようになりました。お腹を切らないで、口や肛門から内視鏡を挿入し患部に到達して直接治療できるため、術後から退院までが短期間になることもあり、患者さんのQOL(Quality of Life=生活の質)の向上に繋がり、社会的にも医療費抑制に貢献できます。しかしながら、内視鏡を用いた治療は医師にとってはとても難しい手技(しゅぎ)が多く、その手順も複雑になっています。
この研究総括を担当される菅野医師は2011年3月11日の東日本大震災の時に勤務されていた宮城県本吉郡南三陸町の志津川病院で迫りくる津波の中での医療行為で注目され、米国TIME誌の「The 2011 TIME 100」に選出されました。その後、菅野医師は被災者がストレスを起因とした潰瘍性出血になりやすいという報告をしました。一般的に心臓に近い臓器からの出血は勢いが強く危険です。それに伴い消化管における止血技術の重要性を明らかにし、シミュレーターの開発に取り組まれております。さらに地域医療の充実、若手の医師教育に関わる仕事もされています。
当社は医療用モデルの設計・デザイン・造形といった技術と症例及び内視鏡・処置具類の正しい医療知識に基づき、このような社会課題の解決に向けてご提案できると考えております。また当社がものつくりに携わることは、これまで当然と考えられた大きなコストと時間の削減にも寄与する事が期待されています。
菅野 武 (かんの たけし) 医師
東北大学 大学院医学系研究科消化器病態学分野 准教授
自治医科大学 医学教育センター 医療人キャリア教育開発部門 特命教授